ボストンバッグに
適当に着替えとか詰めた
もう二度と
戻るつもりはなかった
高校の制服も置いていく
先生さえいれば
学校なんてどうでもいい
誰にも気付かれないように
そっと部屋を抜け出す
階段を下りて
玄関で靴を履き
家を出るまでは
すごい緊張で
身体の感覚が変だった
静かに家のドアを閉め
門まで一気に走る
門を出て振り返り
夜の闇の中に
大きな家を見た時
………お母さんも
こんな風に家を出たのかな
そんな思いがよぎった
向こうから
車のライトが近づき
前で停まる
先生が運転席から降りたのと
私が駆け寄ったのは
ほぼ同時だった
歩道の上で
先生に抱きついた
「………先生……
私、先生のそばにいたい
先生のそばで生きていく」
そっと背中に
大きな手のひらが触れる
「うん。ずっと一緒にいよう」
ギュッと
先生は私を抱きしめ
「ずっと一緒にいよう
イチはオレが守るから」
さっきまでの絶望が
一気に喜びに変わる
死にかけてた私を
先生が生かしてくれる
何もいらない
先生だけ
先生だけ
そばにいてくれたら
何もいらない
生きていける



