先生の青





リビングを出ようとした
私の手首を
英雄さんが掴んだ


「待てよ、市花」


「いやぁっ!」



「落ち着いて市花ちゃん」



お父さんは慌てて
ソファーから立ち上がり
私の肩を掴む



「大丈夫だ。
英雄はもう意地悪言わないよ
なっ、英雄」



お父さんは
私の手首を掴む
英雄さんに目を配った



「………ああ
だって市花は
可愛い妹だから」



英雄さんの裏を
知らないお父さんは
あからさまに
ホッとして



「…………市花ちゃん
今まで黙ってたこと
本当に申し訳ないが」



目を伏せ
言いにくそうに
口を開いたお父さん



「市花ちゃんの父親は僕なんだ
今まで隠して申し訳ない」



「………………」



そんなの知ってるよ


視界の端に
必死で笑いを堪える
英雄さんが映る



驚いた様子のない私を
お父さんは不思議そうに見た




「もしかして
お母さんから
聞いてたのかな?」



「…………いいえ」


どうでもいい
気持ち悪い
肩に置いた手をどいて



「…………そうか。
うん、だから遠慮はいらないよ
お母さんがいなくても
堂々と一ノ瀬家の娘として
生活してほしい


僕はもともと君だけを
一ノ瀬に迎える
つもりだったんだ


その時に英雄の母親ともめて
離婚したから再婚したって
経緯があるから


君が遠慮することないよ
僕は娘が欲しかったんだから


ね?市花」


面と向かって
市花と呼ばれたのは
初めてだった



「すみません
頭が混乱して……
今日はもう」


「ああ、そうだね
部屋に戻って
ゆっくり休みなさい」



逃げ出すように
リビングをあとにした



気持ち悪い
もう ここには いられない