ショックを受ける私の隣で
「あーあ、
恩知らずもいたモンだ。
貧乏母子に同情して
再婚してやったのにな」
嘆くような大声は
どこか楽しげだ
「ろくでもねぇババアだよ
お荷物置いて夜逃げとは」
握りしめた手に
爪が食い込んでいく
言われても仕方ない
私の母親のした事だ
「英雄!」
お父さんが厳しい声で
英雄さんを制した
「市花ちゃんに非はないだろう」
お父さんににらまれても
英雄さんは「ふふん」と
余裕の笑みを浮かべてた
「市花ちゃんは
英雄の大切な妹だ
これからは兄として
しっかり妹を守りなさい」
…………はい?
今、なんて言ったの?
「市花ちゃん
何も気にしないでくれ
これからは
母親がいなくなった分
僕たちを頼りなさい
おばあちゃんは
まだ興奮してるからね
英雄を家に戻して
間に入ってくれるから」
………英雄さんが家に戻る
「また、よろしくな市花」
反射的に
激しく首を横に振った
「………いや。
出て行きます。
今すぐ出て行きます。
もうお世話にはなりません」
隣にいる英雄さんが怖くて
ソファーから立ち上がり
2、3歩 離れた
「出て行きます今すぐ
ここには、いたくない……」



