ケータイを握りしめ
ギュッと唇を噛む
……お母さんがいなくなった今
追い出された方がましか……
これで完璧に
私の帰る場所は消えた
ふわっと
後ろから抱きしめられて
ハッとする
先生からは
シャンプーと
入浴剤の匂いがする
「お父さんから?
なんて言ってた?」
「…………うん」
なんて言えばいいのか
全然分からなくて
言葉が出てこない
ただ じっと
握りしめたケータイに
視線を落とした
何も言えない私を
気遣ってか
先生から質問がくる
「お母さんから連絡は?」
黙って首を横に振る
「……お父さん、
帰ってこいって?」
「……うん
でも明日帰るって事にした」
「他には?」
「………明日……
話し合いを………」
「………イチ」
ギュウ………
私を抱く腕に力がこもる
右の首筋に
先生は唇をつけて言った
「結婚しようか」
キュウ……と胸が震えて
頭のてっぺんから
つま先までしびれた
「ね、結婚しようよ
オレと結婚して
ずっとずっと一緒にいよう」
「………せ」
先生と言いたかった
けど呼吸が乱れて
声がうまく出ない
首筋に感じる熱い唇
クラクラする



