先生の青





マンションに帰って
先生がお風呂に入ってる時
お父さんから着信があった




「市花ちゃん?
今どこにいるの?」


初めて聞く
ケータイ越しの父の声
英雄さんと似てて
一瞬、ひるんだ



「………あ、友達の家です」


はぁ。って
重たいため息をついてから
お父さんは


「お母さんのことがあって
君が家に帰らなかったら
僕がどう思うか
考えてもいないのかい?」



「………すみませんあの………」


聞くのは
とてもためらったけど
聞いてみた


「お母さんから連絡は……」


「ないよ、何も」


………やっぱりな


ケータイを耳に当て
うつむいた時
先生がお風呂から
上がってきた



パンツ一枚で
わしわしタオルで
濡れた髪を拭きながら


「……イチ」と言いかけて
私が電話中だと気づいて
口をつぐみ
冷蔵庫からビールを出した




「市花ちゃん」


「はい」


「すぐ帰ってきなさい
どこにいるのかな?
今、英雄を迎えに
行かせるから」



「ひ……」


英雄さん?
声が出そうになって
パッと手で口をふさぐ



先生に
英雄さんの名前は
聞かれたくない



でも、なんで英雄さん……



「市花ちゃん?」


「あ」


キッチンのシンクに
寄りかかり
ビールを飲む先生を見る



電話してる私の様子を
うかがうような気配を感じる



「すみません、お父さん
今日は……その……
帰りたく……ないんです
少し、気持ちの整理を
したいというか」



「………そうか、そうだね
だけど話し合わなきゃ
いけない事もある
明日はちゃんと
帰ってきなさい」




ケータイを切ると
手が震えてた



英雄さんが家にいるの?
話し合わなきゃいけない事
それって私を追い出す事?