先生の大きな手の感触を
肩に感じると
すごく安心して
そのまま身体を先生に委ねた
「体調、悪かったのか?」
「ううん」
「嘘つけ。こんな顔色で」
手のひらで頬を撫でられ
目を閉じて言った
「今朝ね、お母さんが
いなくなったの」
「…………え?」
なぜだか
「ふっ」と笑いがもれた
「お母さん
私を置いて
出て行っちゃった」
「え?イチ………」
先生は身体を少し離し
私の顔をのぞき込んだ
「出て行っちゃったって」
先生も信じられないっていうか
理解できないって感じ
だけど私の目をじっと見て
「…………そんな」
一言、呆然と呟き
表情を失くして
床に視線を落とした
「嘘みたい、だよね
私も、なんか
実感ていうのかな
全然なくて………」
へへって笑って
前髪を触った
先生は「なんだよ」って
すごく低い声を出した
「……なんだよ、それ」
こんな時に笑う私を
先生は怒ってるのかと
一瞬思ったけど
ギュッて
きつく きつく
先生は私を抱きしめて
「大丈夫だからな」って言った
「大丈夫だからな
オレがいるから
大丈夫だから
安心していいからな」
「先生………」
ぎゅう ぎゅう
先生の腕はきつく
私の身体を締め付けた
「大丈夫だよ、イチ
何があっても
オレがいるから
絶対に守るからな
安心していいぞ
大丈夫だから」
今朝から ずっと
麻痺してた心に
先生の心が届いて
やっと動き出す
「……先生……
……先生…………
私、どうしたらいいの?」
積もり積もった不安を
今やっと言える
「怖いよ、先生
私、どうなるの?」



