学校に着いたのは
2時間目の終わり頃



教室の後ろのドアを開けると
クラスメイト全員が
一斉にこちらを振り向いた




黒板に数式を書いてた
数学の先生もこちらを向いて



私は「遅刻しました」と
短く言ってから席に着いた






休み時間
絆が私の席まで来て


「大丈夫?」って
怪訝な顔して訊いた


数学の教科書を
机にしまいながら


「え?なにが?」


お母さんの事は
もちろん誰にも言ってない



絆はギュッと眉を寄せ


「市花。顔色すごく悪いよ?」



「………そう、かな?」



「うん。
体調悪くて遅刻したの?」



「あ……、ううん。
ただの寝坊だよ」



ハハハって
乾いた笑いで誤魔化した



チャイムが鳴って


「無理しないでね」


絆は心配そうに言って
席に戻ろうとした時
肩に糸屑を見つけて



「………絆、肩に」


ガタン
椅子から立ち上がると
教室全体が歪んで回った



………なにこれ



「…………市花?」


振り向いた絆が
すぅ……っと
暗闇に溶けていく



あ、と思った時には
身体がぐにゃぐにゃの床に
沈んでいった




「市花!」




ザワッ………




「市花!市花!」
「誰か!先生呼んできて!」
「市花!大丈夫?」