とりあえず学校に行きなさい



お父さんは普段通り
病院に行く支度をしながら
私に言った



おばあさんは
散々 わめいた後
血圧が上がったと
自分の部屋に引っ込んだ








駅のホームに立ち
高校へ向かう電車を待つ



電車がホームに滑り込み
風がスカートの裾を揺らした



開いたドアに
高校生の群れが
吸い込まれていく




足がコンクリートに
くっついたみたいに
一歩も動かなくて



電車を一本見送った



ホームの喧騒も
今はすごく遠い




最後に見た母の姿を
必死に思い出そうとした



だけど浮かぶのは
どうしても
見知らぬ男と歩く
暗い背中だった




怒りも責める気持ちも
湧いてこない



指の隙間、
砂がこぼれていくような
虚しさと喪失感だけが
私を押し潰した





  何気ない朝だ



全くなんてことのない
いつもの朝だ。




毎日、毎日
繰り返された
いつもの朝




お母さんは私を捨てた