先生の青





「………………」



頭が真っ白って
こういう時に使うんだ



言葉を失い
立ち尽くす私に
お父さんは
少し疲れた表情で
淡々と話した





「僕が夕べ寝た時は
お母さんいたから
皆が寝静まった真夜中
家を出たんだろうね」




………?
なに?
なに言ってるの?




「書き置きも何もないんだ
市花ちゃん、
お母さんからなにか……」




「………書き置き……が
ないのに……どうして……」



お母さんが家を出たって
わかるんですか?



最後まで
言葉は続かなかった



お母さんが家を出た



信じるとか以前に
理解できない




呆然と呟いた私を
お父さんは哀れむように見た





「旅行用のボストンバック
洋服、化粧品がなくなってる」




「―――――――――………」




弾かれたように
廊下を走った



夫婦の寝室に飛び込んで
乱暴にクローゼットを開ける




いつも着てる
水色のカットソーがない
ジーンズもない
スカートも…………



クローゼットを荒らす私を
お父さんは戸口から見てた



「………市花ちゃん」



寝室の隅にある
ドレッサーに駆け寄り


…………ない


化粧水も乳液も
ファンデも口紅も


……ない……………



崩れ落ちそうな身体を
ドレッサーに手を着いて支えた




お母さんが
普段 使ってた物が全て
消えていた