学校から帰ると
待ち構えてたように
リビングから
お母さんが飛び出してきた



玄関でローファーを脱ぎ
スリッパに履き替え
階段をのぼる私の後を追い




「市花…夕べはどうしたの?」



自分の留守中
娘が家教をサボり
無断外泊をしたんだ



姑に嫌みを言われたの?
それともご主人ですか?




何も言わず2階の廊下を進み
部屋のドアを開け、入る



ドアを閉めようとしたら
ガッとドアを掴み



「市花、答えなさい。
こんな風に勝手な事をしないで」



怒るよりは嘆く
って感じの口調


勝手な事をしてるのは
そっちなのに


口をきくのも気持ち悪い
この人の勝手で
私の今までが
どんなに振り回された事か



「………市花……」


母親を見つめる私の目は
どんな色をしてたんだろう



お母さんは頬を強ばらせ
ドアを掴んだ手が
ダラリと下がる




私はそのまま
静かにドアをしめた


閉ざされていくドアの隙間
うつむくお母さんの顔が見えた



スクールバッグを机に置き
制服を着替えると


とても ゆっくり離れて行く
お母さんの足音が聞こえた