「絆ね、卒業したら
結婚するんだって」
先生は予想外な話に
「え」って目を見開いた
「絆が?
絆の彼氏って社会人なの?」
コクコク
ピザをかじりながらうなずいた
「ふ~ん。でも絆なら
ほんわかしてるし
可愛い奥さんになるだろうな」
「私もそう思う。
絆なら幸せになれる。
幸せな家庭が
すごく似合うもん」
先生は なにそれって少し笑った
「幸せな家庭が似合う、
似合わないってあるの?」
「あるよ。少なくとも
私は似合わない」
先生は一瞬 真顔になった
だけど何も言わずに
次の私の言葉を待った。
すぐに
「そんな事ないよ」なんて
先生が安っぽく
慰めの言葉を
口にしなかったから
話を続けられた。
「私は信じられないもん。
幸せな家庭なんて
アニメとか作り物の
世界にしかないよ」
「例えばサザエさんとか?」
先生の言葉にうなずいて
「好きな人と結婚して
いつも他愛ない事で
笑いながら生活して
そのうち子供が出来て
毎日、毎日、毎日、毎日
小さな衝突はあっても
仲直りして
何気ない平和が続くなんて
絶対に嘘、あり得ない」
話しながら
視線の先に映るのは
薄暗い路地を歩く
母親の背中だった



