「お風呂入ってくる」
先生から逃げるように
浴室へ向かった
温かい湯船につかると
さっき見た
信じられない光景が浮かんで
ブクブク
鼻の頭まで
お湯の中に沈んだ。
お風呂から上がった私に
先生は「何がいい?」って
ピザのメニューを見せた。
聞き出すのを諦めて
私が話し出すのを
気長に待つ事にしたんだな
だけど
母親の不倫現場を
見たなんて
そんな言葉を
口にしたくなかった
ベッドを背もたれにして
並んで座り
届いたピザを食べる
リビングの片隅に置いた
スクールバッグから
ヴーヴーと
ケータイの震える音が
聞こえる
……家教サボりだもんな
だけど、どうでもいい。
もう、どうでもいい。
だって訳わからないよ。
何も言わず
ビールを飲みながら
ピザを頬張る先生に
「これは内緒の話なんだけど」
そう話を切り出すと
「うん?」って
すごく優しい声が返ってきて
ホッとして
少し肩の力が抜けた。
「先生、ちゃんと
内緒にしてくれる?」
上目遣いで訊く私に
小さな子供でも見るように
先生は微笑んだ
「内緒にするよ
だから教えて」



