先生の青





放課後はチラッと
美術部に顔を出した。



今日も7時から家教だし
ゆっくり絵を描く暇はない



一学期で部活は引退
描けなくなると思うと
無性に油絵の具の匂いが
恋しくなる



下手だけど絵を描くのは
やっぱり好きなんだな




美術室に入ると
一番に森さんの声が聞こえた



「スゴい、きれぇ」



三島先生が教室の片隅で
絵を黙々と描いてる。



森さんは
背後をうろうろしながら


「きれぇな青ー」


スゴい、きれぇを連発しても
先生の表情は変わらない



キャンバスに向かう時は
全神経集中してるんだ。
先生には何も聞こえてない。




「あ、一ノ瀬先輩
お久しぶりですね」


2年生に声をかけられ
適当に挨拶すると
先生が顔を上げ
こちらを向いた。




目が合ったと思ったら
先生はポケットから
コインケースを出し


こちらに向かって放り投げた



パシッ
両手でキャッチした私に



「コーヒー買ってきて」



当然といわんばかり態度と声から親密さがにじみ出てしまってる。



……こらこらこらこら~



部員の皆さんの
少し訝しむ視線に
気付かない先生は
またキャンバスに向かう




仲が良すぎるなんて
噂になったら
どうしてくれるんだ。



………本当に先生って
自分の事に対しては
うっかりだよなぁ




先生のコインケースを持って
美術室を出る私の背中に
森さんの視線が
とっても痛かった