「前田です。
市花ちゃん。よろしくね」
愛想よく微笑む
大学2年生のお姉さん。
毎週 月、火、金、土に
私に勉強を教える家庭教師
シャーペンも持たず
2時間お地蔵サマにでもなるかと思ったけど
この女子大生のお姉さんに
罪はない
言われるまま
机に向かい
問題を解いていく
「正解ー。市花ちゃん
家教 必要ないくらい
スゴーい」
ご機嫌とりみたいな
前田先生の声が
耳鳴りみたいに響いて
シャーペンを動かす度
吐きそうになった。
6月になって衣替えをすると
ベストからでた
ブラウスの白い腕が
やたらと明るく見える。
お昼休み
教室で机くっ付けて
絆とお昼食べようとしたら
「市花、ちょっとお話が」
絆が少し言いにくそうに
周りを気にして言った。
聞かれたくない話なんだろう
購買で買った
メロンパンと牛乳持って
校舎裏に行った。
校舎の壁に寄りかかり
紙袋から
メロンパンを出しながら
「話って?」
がさがさ
紙袋を鳴らす私を
絆はしゃがんで
口元を両手で覆い見上げて
「結婚することにした」
「へー、結婚」
ガブッと
メロンパンをかじり
甘さが口いっぱいに広がる
ふーん結婚するんだ。
……結婚、ケッコン、けっこん
「―――――――けっこんっ!」
叫んだ私に
絆は「しぃー」って
人差し指を立てた



