学校から家に帰り
素早く着替えて
バイトに出かける準備をする



部屋から出て
階段を下りると
玄関のホールで
お母さんが待ち伏せてた。



私は目を合わす事もせず
お母さんの前を通りすぎたけど



「バイトなら行く必要ないわよ市花」


冷たく響いたお母さんの声に
バッと振り返る。


「どういう意味?」


戸惑いを隠しきれず
眉を寄せお母さんを見た


お母さんはスリッパの爪先に
じっと視線を落とし
伏せた目からは
感情が読み取れなくて
少し不気味に感じた



「店長さんにお話して
辞めさせてもらったから」



「はぁっ!?」


辞めさせてもらった?
だって一昨日は普通に出てた



「……なに?
わけわかんないだけど」


すっかり混乱した私とは違って
お母さんは無表情のまま
用意してたんだろう
セリフを淡々と口にしていく



「言ったでしょう?
あなたは進学するの。
これから週4日
家庭教師が付くから」



「家庭教師?」



「もう3年だもの。
受験の準備、遅いくらいよ」



「―――――――………」



予期せぬ展開に
何にも言葉が出ない。



立ち尽くす私を
玄関ホールに残し
さっさとリビングに引き上げたお母さんの行動はまさに事務的だった。