別に心配ってわけじゃないし
ましてや、ヤキモチでもない



だけど、
焼きそばパンを一気に食べ
中庭から美術準備室へ急いだ



絆は「がんばれイチ」なんて
私をからかって教室に戻った




準備室のドアからは
特徴のある笑い声が聞こえる



絆の情報は正しいらしい……



さて、どうしよう
中に入って
森さんを追い払う?


でも なんで私が
そんなことを
しなきゃいけないの?



悶々とドアの前で考えこむ


……でも朝も一緒って
やっぱり一言くらい
私に相談してくれたって……



こうしてる間にも
中からは
楽しげな声が漏れてくる
(ほとんど森さんの声だけど)




えぇ~いっ!
ここまで来たら
突入だ



コンコン
ドアをノックすると
「はい」って三島先生の声



「失礼します」



ドアから顔をのぞかせた私を
森さんは迷惑そうに見たから


心なし声が遠慮がちになる
なんで私が
森さんに遠慮がちになるんだ?



「お、イチ。どうした?」


先生はいつもと変わらず
窓際の椅子に座ってた



「……あの、えっと」


どうしたって
どうしたんだろ
何も思い浮かばないし



困った私の顔を見て
先生は森さんに


「悪い。
愛夏は席を外してもらえるか?」



「………はぁい」



ドアの前
私の隣を横切る時
森さんはあからさまに
私をにらんで行った



ちょっと、ちょっと
先輩は私の方なのにっ!