翌朝、私の熱はすっかり下がり
1日中、部屋で寝たり起きたりを繰り返した。




夜、先生の車で
家まで送ってもらう



家の前に車がとまり
帰らないといけない
先生と離れてしまうと思うと
子供みたいに心細くなった




うつむいて


「じゃ、明日学校でね」


そう先生に告げて
車を降りようとしたら



「イチ」


先生が私を呼び止めた


「なに?」


先生は私の手首を掴み
手のひらの上に何かを乗せた



「今度は受け取ってもらえる?」



手のひらには鍵が乗ってた



「………先生」



先生は唇を噛んで
少し怒ってるようにも見える
緊張した真剣な表情をして
私を真っ直ぐ見てた



「昨日も言ったけど
オレは弱いし、
イチを幸せにする自信はない


だけど、これからは
ちゃんと向き合っていきたいと思うんだ


痛みや弱さを理由に逃げても
イチに対する気持ちは
消えないから」




手のひらに乗せられた
銀色の鍵は温かく



……先生のぬくもりだ



ギュッと鍵を握りしめ
口元にあてた



「じゃ、今度は急に
押し掛けるから」



上目遣いに言うと
先生はうなずいて



「毎日、楽しみに待ってます」と答えた