さすがに少し疲れたかなぁ
でも、こんな時に疲れるような
やわな自分は嫌だ………




「…………はぁ……」



息を吐くと
手が勝手にシンクの縁を掴んだ
身体が重くて掴まらないと
立てない………


何だろう?
何だろう?



「イチ」



ハッとして振り向いたら
いつの間にか先生が
真後ろに立ってた



「どうしたの?先生」
そう言いながら
水道を止めると



先生は眉を寄せ
じっと私を見た



……あ、先生に表情が戻ってる
良かったなぁ…………



「イチ。お前、熱ある?」



「え?」



熱なんてないよ
そう言おうとした時
先生の手のひらが
私のおでこに触れた



「………熱いよ、イチ」



「え?え?」



熱?


先生に肩を抱かれ
ベッドに座らされる



「ほら、計りな」



体温計を渡されて
わきに挟む



  ピピッ、ピピッ、ピピッ



音が鳴って
体温計を取り出したら



バッと素早く
先生は私の手から
体温計を奪った




「――――――イチ」



「熱なんてないでしょう?
私、風邪なんてそんなに」


「38度2分」


「はぁっ?」



思わず「嘘だっ」って言って
先生の手から体温計を取る



  38.2℃


間違いない………