マンションに帰り
すっかり冷えきった先生を
お風呂に入れた



先生が入浴中の間に
スーパーに出かけ食材を買う



昨日はそれどころじゃなく
気にならなかったけど


久しぶりに来た先生の部屋は
相変わらず散らかってて
ご飯を作る前に掃除をした



別に風水とかなんて信じない
それくらいで幸せになれるなら
全人類が幸せだよってくらい
私はひねくれてるし



だけど、気が滅入ってる時に
部屋が散らかってては
余計に気が滅入るんだ



部屋がスッキリすれば
心も少し軽くなる……
少なくとも私はそうだ。



お風呂から上がった先生は
忙しく動き回る私を
ベッドの上、ひざを抱えて
何も言わずぼんやり見てた











「全部とは言わないけど
半分以上は食べるよーに」



フミさんが亡くなってから
食事もろくに取ってないはずだ



片付いた部屋のテーブルの上
鍋焼きうどんを出した



先生はしばらく虚ろな目で
うどんの湯気を眺めて



………無理かなぁ
食べられないかな



一口でも食べてくれたら……



祈るような気持ちでいると
先生が箸を持ち
ゆっくり食べ始めた



――――――食べた!



あぁ、良かった……

安堵から胸がじんと熱くなって
涙が出そうなくらい嬉しかった



まるで保護した瀕死の小動物に
餌を与えてるような気分だ



これで何とか大丈夫だろう
先生がうどんを食べる姿を見て
そう思った