絆の話を聞いてると
ある話を思い出した
「……ハリネズミのジレンマ」
呟いた私に
絆は「え?」って聞いた
「知らない?
ハリネズミのジレンマ」
絆は首を横に振った
「…………ハリネズミのカップルがいてね
寒いから身を寄せて
互いを温め合おうと
するんだけど
近付けば身体の針で
相手を傷つける
だけど、離れれば寒い
だから、針で相手を傷付けず
寒くもない距離を見つける
近づき過ぎず、離れ過ぎず
それが人間の心理に
当てはまるんだって」
絆の言った
近づき過ぎると
彼は苦しいみたいだから
その言葉でふいに思い出した
絆はふぅんってうなずいて
「私たちの恋は
ハリネズミの恋?」
絆の言葉に笑うと
「市花の恋も?」
不意討ちの質問に
言葉を失う
絆は何かを悟った表情で
「ただの勘だけど
市花と三島先生
何かあるんでしょ?」
「………絆」
「夏休みの途中から
部活に出なくなった市花の事を私に訊いてきた三島先生いつもと違ったし
始業式の朝
市花を待ってたし………」
うつむいた私に
「言いたくないなら
言えないなら聞かないよ」
そう言った絆の声は
大人びて響いた
「ねぇ、絆」
「ん~?」
「恋ってさ、痛いよね?」
「………うん。
痛くて、苦いね」
二人でフェンスに寄りかかり
何もない空を ただ見上げてた



