先生の胸に顔を埋めたまま
途方に暮れる
激しく高鳴る鼓動だけが
鼓膜に響く
ギュッと私を抱く腕に力を込め
「………ごめんな、イチ
イチのこと、
苦しめてるのは わかってる」
謝られると
目の周りが熱くなって
じわじわ涙がにじんできた
涙がこぼれないように
先生の腕の中
唇を噛み締めた
「だけどオレは
イチと一緒にいたいんだ。
こんな風に
いなくならないでほしい」
「……無理だよ。だって」
次の言葉を口にすると
涙は堪えきれず溢れた
「だって先生は彼女に会いに
行くでしょう……?」
「イチ」
「私、これからの週末を
胸を掻きむしるような
苦しい思いで過ごすのは嫌」
泣くのは絶対に嫌だったのに
ポロポロポロポロ
こぼれる涙が先生の胸を濡らす
「フミの事があるのに
勝手だけどオレ
イチがいないとダメなんだ」
「フミさんもだけど
カナさんもだよ
私、どうしてもカナさんは嫌」
………可哀想に
彼女の言葉は頭から離れない
「絶対に嫌。
あの人だけは絶対に嫌」
私はカナさんが怖かった
あの人は先生を愛していない
だからこそ
先生を縛りつける事が
出来るだろう
寂しい時の慰めとして
悪びれもなく
先生は彼女を忘れていない
彼女が寂しいと言えば
吸い寄せられるように
行ってしまうだろう
カナさんは先生を縛る糸を握って離さない
それが わかる



