先生の青





マンションを出ると


薄い朝もやに包まれた道を
全力で走った



手も足もバラバラに
なりそうなくらい
無我夢中で走った



涙は止めどなく流れて
前がぼやけてよく見えない



胸がヒリヒリして
呼吸するたび痛くなった時


足がもつれて
アスファルトの上
派手に転びうつ伏せに倒れる



手をついて
起き上がろうとしたけど


「………げほげほっっ……」


息を吸おうとする度
激しく咳こんで
吐きそうになる


道に倒れたまま
大きな声で泣いた



先生は私の全てだ



先生を失えば
私には何も残らない


戻りたい。今すぐ戻りたい


そして、何も知らないフリして今までの続きをするんだ



先生が週末
病院で誰と会うかなんて
知らない



知らないフリで
先生の前で彼が望むように
可哀想な女の子を演じれば……



ダメだ、ダメだ
出来ない
そんなこと出来ない………


全てを知ってしまった今
知らない頃には戻れない




ひとしきり泣いて
やっと上半身を起こし
道の上に座る


ひざやすねから血が流れて
やっと転んだ時の痛みが
少しずつ身体に感じる



涙で濡れた顔を上げると


白い空に金色の朝日が
宝石みたいに輝き出して
言葉にならないほど綺麗だった




手でゴシゴシ涙を拭き
力を振り絞って立ち上がる



痛む足を引きずりながら
ゆっくり ゆっくり歩いた



何てことはない
ふりだしに戻ったんだ


先生と何もなかった


ただの生徒に戻っただけだ……