「違うよ、イチ。
なんで……
なんでカナと
そんな話になったんだ?」
「………病室でしてた
先生とカナさんの話を
廊下で全て聞いてたの」
先生は言葉を失い
吐き出した息は
困惑したように震えてた
「誤解、するなよ?
カナとはもう何もないんだ
アイツが結婚する前の
一時的な…………」
「カナさんが結婚して……
寂しくて仕方ない?」
「イチ、違うよ
オレはカナの事はもう何も」
「寂しくて仕方ないから
私とするんだよね?」
「違う……」
「そうだって言ってよっ!」
身体の奥が火のように熱い
精一杯ふたをしてた
病院でのショックが
一気に噴き出した
「私といるのは
寂しいからだって言って!
優しいことなんて言わないで
ちゃんと、はっきり傷つけて
先生が嫌いになれるくらい……
ちゃんと傷つけて………」
お願い。と言った私の声は
涙で潰れるように途切れた
先生はきつく私を抱きしめ
「離してっ……」
叫んで腕を振りほどこうと
いくら暴れても
より きつく
抱きしめられるだけで
ただ ただ涙がこぼれた
「イチ」
先生は もう必死な声で
「イチ。オレはイチを愛し」
「やめてっ!聞きたくない
今さらそんなこと言わないで」
先生の腕の中
耳をふさいだ
そんなこと言わないで
今 言うなんてズルいよ
すごくズルい



