胸に降りつもる
いろいろな苦しい感情に
押し潰されないよう
床についた足に力を込めると
彼女が来た
ガラッ………
病室のドアが開き
私が顔を上げるより先に
素早く先生は
椅子から立ち上がった
見上げた先生の横顔は
やっぱり見たことのない表情
そうか、先生は
愛しい人を
そんな目で見つめるんだ……
「泉、来てたの?」
少し鼻にかかった甘い声だ
病室に入り私を見て
彼女は不思議そうな顔をする
「あ、カナ
この子はオレの生徒
一ノ瀬 市花」
先生から紹介されて
椅子から立ち上がり
頭を下げる
「イチ、彼女は……」
先生の言葉をさえぎり
彼女が口を開く
「はじめまして市花さん
私、安田 史絵の姉
藤崎 哉絵です」
………藤崎?
ああ、そうか
カナさんは結婚してるんだ
カナさんの
左手のリングを見てから
ゆっくり視線を上げる
長い髪をハーフアップにして
可愛いよりはきれい系
背の高い人だ
先生のスケッチブックとは
少し印象が違う
スケッチブックのカナさんは
柔らかそうな
イメージだったけど
実際、目の前にいる彼女は
キリッとした
少し冷たそうなイメージだった



