病室を出て行く先生の背中を
心細い気持ちで見送った
じっと自分のひざに
視線を落としてたけど
こわごわベッドの方を見る
布団の上に置かれた手
そっと腕を伸ばし
指先で触れると
ちゃんと彼女の体温を感じ
驚いた
生きているんだ
間違いなく
改めて感じる事実に
引き裂かれそうな痛みが
全身を走る
ガラッ………
病室のドアが開き
慌てて手を引っ込めた
花が綺麗にいけられた花瓶を
先生はベッドサイドの台に飾り
「うん。綺麗だ」って
満足そうに笑った
椅子に座り
さっき私が触れた彼女の手を
先生は両手で握り
「花の香り、わかるか?フミ」
週末、先生はいつも
眠るフミさんに話しかけるんだ
返事がなくても
その手に触れ
彼女の体温を感じ
罪悪で自分を縛りつけ
再び彼女が目を覚ますことを
祈るんだ――――――――――
…………早く起きて
先生を解放してほしい
どんな答えが待っててもいいよ
ここは果てのような場所
どこにも進もうとしない
先生を早く解放してほしい



