「ほら、見てごらん」
先生は私の腕をほどき
肩を抱いて
広がる景色を指さした
「イチ、見たいって
言ってただろう」
海風が私の髪を乱す
目の前に広がる一面のブルー
ここが先生の………
先生の心を残した場所だ
胸に込み上げる
火傷しそうなほど熱い感情は
言葉を全て奪って
何も言えず
ただ ただ海を見つめた
先生は私の肩をしっかり抱き
離さなかった
水平線には漁船と貨物船
頭上にカモメが飛び交い
見上げると
「口開けて上を向くな
カモメのフン入るぞ」
先生の一言で
一気に現実に引き戻される
「な、なにそれっ」
私が怒って先生の胸を叩くと
あははって笑い
「まぢだって
まぢで口に入るぞ」
も~、なんで そういう事を……
少し脱力すると
「さ、もうそろそろ行くか」
先生に促され
崖を離れる
柵を越える時
もう一度、
青い海を目に焼き付けた
見たことのないはずの
子供の頃の先生が
二人の少女と遊んでる
苦しい恋心など知らず
無邪気に海ではしゃぐ
先生がいるような気がした
車に戻り
シートベルトを締める
先生の横顔に
どうして海を見せてくれたのか
聞きたかったけど
聞けなかった
先生の心にある
予感を知りたくない



