先生の青





夕食の後
お皿を洗う先生の後ろで


「じゃ、私 帰るね」


そう告げると
弾かれたように振り返り


「帰るの?」


帰るの?って……
そんな風に言われても


「私は夏休みだけど
先生フツーに学校でしょ?」


「そうだけど」


ビミョーな沈黙が流れる


いつもは、いや、今もだけど
私が家に帰りたくなくて
気がつかなかった



いつだって 先生も
私を帰したくなかったんだって事に今さら気付いた




息苦しいあの家を思ったり
素直に寂しそうな顔する
先生を見ると
帰るって言えなくて


結局 泊まることになった



その夜は
一緒にベッドに入っても
先生は私の髪や頬を撫でる以上のことはしなかった



少し物足りなく思う
自分が恥ずかしい



暗闇の中お互いに向き合って
見つめ合うと
フツーに恋人同士みたいだ



夜の間だけ錯覚して
自分を惑わすのは 容易い



「……先生」


声をかけると
髪を撫でる手が一度止まる


「先生は私とこうしてて
何とも思わないの?」


先生が押し黙った
ところを見ると
いろいろ思ってるのかな



「私たち、教師と生徒だよね
イケない関係じゃない?」


茶化すように笑った私を
先生は「ふっ」と笑って


「そうか、イチは生徒だもんな
ごめん イチ
オレはもうイチを生徒として
見れないんだ」



口元だけ笑って
先生は目を伏せた


珍しいね、謝るなんて
だけど、嬉しいんだよ
私だって生徒としてなんて
見られたくない