先生の青




足が一歩前に出た瞬間



――――――――グイッ



すごい力で腕を掴まれた



「―――いっ」

思わず声が漏れて
顔を歪ませると



パッと手を離して



「………ごめん……」


先生は さっきとは
打って変わって


迷子みたいに
寂しそうな
困った表情になってた



…………だから
それがズルいんだって



どうして いいのか
わからなくなって
うつむいて



「……なんで
今まで無視してたの?」


小さな声で訊くと


「それはイチの方だろ
何も連絡くれないし
話しかけてもくれない」



思わず「はあ?」って
間の抜けた声が出た


顔を上げて先生を見ると
ちょっと拗ねた顔をして



「オレの方から……
何かなんて言えないし」



あー、もう
なんなんだ この男



脱力して肩を落とす
先生は小さな子供みたいだ




今度はそっと腕を掴み
先生は何も言わず
空き教室へ
私を引っ張って行った