先生の青





会話はそこで終わり
彼はグラウンドに戻ると思った


けど


「予定ないなら
今度の夏祭り
一緒に行かね?」


いきなりの誘いに
不意をつかれて
何も言えなかった



笹森くんは取り繕うみたいに


「予定がなかったら
でいいんだ

オレ、ケータイ変わってないし
連絡してよ」



「……あー、うん
わかったぁ………」


この誘い
深い意味を考えてしまうのは
私の自惚れだよね……



「じゃ、オレ戻るわ」



笹森くんは背を向けて
玄関に向かい少し歩いた所で



「……そーだ、市花!」



振り向き こう訊いた


「市花は彼氏いるの?」



もちろん迷わず答える


「いないよ」


「好きなヤツは?」


一瞬 胸の中に
顔が思い浮かびそうになって


打ち消すように言った


「いない」



笹森くんは「ふーん」
って少し笑い
玄関の方へ消えて行った




手に持った
汗をかいたイチゴミルクを見て
やっぱり そういう事かな?
なんて考えて



いやいや いやいや
自惚れだ


首を横に振ってから
美術室に戻ろうとした時




「なーに百面相してんだよ」



階段の方から三島先生が来た