先生の青





人気のない生徒玄関
近くの自販機



かすかにグラウンドで
練習に励む
運動部のかけ声が聞こえた



お目当ての
イチゴミルクのボタンを押し



ガコンッと
大きな音をたてて出てきた
四角い紙パックを取り出す



その時



「市花」



声をかけられ
顔を上げると
陸上部のユニフォームを着た
隣のクラスの
笹森(ササモリ)くんがいた



笹森くんは中学の時
3年間、同じクラスで
わりと仲が良かった



「市花は美術だったっけ」


「うん」


自販機の前で
笹森くんと向き合い話す


中学の時は毎日
他愛ない話をしてたけど
高校に入ってから
クラスが違うせいもあり
あまり話さなくなった




「なーんか今日も暑いね」


笹森くんがランニングの
胸元をパタパタしながら言った


天気の話は本当に万能だ


そこが切り口になって
会話が進む



「笹森くんサボり?」


私が軽い口調で言うと
「んー」って
彼は上目遣いになり


「便所だよ」


会話が一度 途切れて
自分のつま先に視線を落とした



「市花はさ、
夏休みどっか行くの?」


顔を上げ
「ううん」って首を横に振る



「そっか、そっか」


2、3度うなずいて
笹森くんは腰に手を当てた