先生の柔らかい唇が
私の唇を噛み


薄く開いた口に
熱い舌が入る


長いキスに苦しくなって
離れようとすると


大きな手のひらが
後頭部を捕まえて
離さない



頭がクラクラしてきて
声を漏らすと



力強い腕に抱きすくめられ
ベッドの中に引きずり込まれた



長いキスのあと
私の上になった先生と
何も言わず しばらく見つめ合う



聞こえるのは
激しい鼓動と
荒く乱れた呼吸だけ



中途半端な優しさなんて
もう必要ないんだ



腕を伸ばし
先生の首に抱きつくと
息が出来なくなるくらい
先生は私を抱きしめた





恋でもなければ
愛でもない



先生と身体を重ね
触れられるたび
嬉しくなると
一生懸命 自分に言い聞かせる



恋でもなければ
愛でもない


優しさなんてどこにもなく
あるのは 弱さと寂しさだけだ



私を抱きながら
先生は吐息だけの声で


「……イチ、……イチ」


私を何度も呼んだ



甘く胸を震わせる私は
やっぱり救いようのないバカで



目を閉じると涙がこぼれた



何もいらない



幸せなんかクソくらえだ



癒えぬ傷だけが


私と先生を繋ぐ唯一の糸なら


楽になんかなりたくない