先生の青





アトリエを一歩出て
後ろ手にドアを閉めた



顔を上げる前に
聞こえたのは
彼の うなされる低い声



ふと ベッドに眠る先生の
哀しげに眉を寄せた
寝顔を見た瞬間



  ああ……


水風船が叩き割れるみたいに
私の中で想いが弾けた



腹がたつ
もう何もかも手遅れだ




私は先生が愛しい




彼が哀しげにしたら
抱きしめずには
いられないんだ




報われるとか
報われないとか


真実とか
嘘とか


強さも弱さも


そんなの どうでもいい



行き場のない私を
抱きしめ温めたのは
先生なんだ





ベッドの横に
ひざをつき座り


途切れ途切れに
うなされる先生の
肩を揺する



「……先生、先生」


ハッとしたように
目を開いた先生は
少しぼんやり天井を見たあと
驚いた表情で私を見た



「先生、うなされてたよ」


前髪をかき上げるように
先生を撫でた
指の間を通り抜ける髪は
ひんやりしてる




先生は目を閉じて
髪を撫でる
私の手首を掴んだ



「イチ」


すごく低い声で


「イチは、
もう わかったんだろ?」



私は何も答えなかった


そんな質問をする先生こそ
もう わかってるんでしょう