先生の青




先生は憮然として


「なんだよ、それ」


「だって、
あんまり簡単に言うし」


キスしたし


先生は不機嫌そうに
まぶたを擦りながら


「簡単に、なんて言わないよ
だけどイチは家で
気が抜けないんだろ?」


「なんで わかるの?」


「わかるさ
何も事情を知らない家族の前で
平静を保つのが どんなに苦痛か」



確かに それもある


だけど それ以上に
あの家での私の立場は最悪だ


平静を保つ以前に
私の存在自体が無いに等しい


……なんて事は言わないけど


これ以上 心配かけたくないし



「イチの気が休まるのが
ここだけなら
泊めたって おかしくないだろ?」



先生が
少し感情的に言ったのは
酔ってるせいなのかな?



自分の考えを
正当化させてるようにも
聞こえたけど……




それ以上 何も言えなくて
またアイスを口に入れると



「………ごめん」


先生が低い声で謝った



「ごめん、イチ

だけどオレは
イチが心配なんだよ

だから……」



うつむいた先生は
すごく寂しげな顔をした



「簡単になんて言ってないし
他の女の子は泊めないよ」



きゅう………
うつむいた先生の表情に
胸が締め付けられる



「私……も、ごめんなさい」




先生が私に対して
抱く感情はわからない


第一 私だって


先生を どう想ってるのか
わかっていない



『恋心』と素直に呼べないのは



私と先生を繋ぐ物が


『心の傷』だから なのかな