木のヘラで一口食べると
舌の上で甘くバニラが溶ける
私がアイスを食べるのを
見てから
先生は自分のアイスを持ち
キッチンに行って
冷凍庫にしまった
「先生は食べないの?」
冷蔵庫を閉めて
振り返った先生の片手には
缶ビール
「オレはもう一本飲むから」
食前に一本
食事中に一本
んで また飲むの?
キッチンからリビングに戻り
またテーブルの前で
あぐらをかいて座って
缶に口をつけてから
先生は訊いた
「お前、いつ帰るの?」
あ、と思って
壁掛け時計を見上げる
10時25分かぁ………
結構 寝ちゃってたんだな……
『帰る』
その言葉はなかなか
口から出てこない
だからといって
『帰りたくない』なんて
もっと言えない
黙りこんだ私に
「また泊まっていく?」
先生は頬杖ついて
少し からかい混じりな
口調で言った
私は少し顔をしかめて
先生を見た
「ん?」って
首を傾げた先生に
「先生って、簡単に女の子を
お家に泊めちゃう人なの?」
『泊まっていく?』
それは
嬉しいと言えば嬉しい
帰りたくないわけだし
だけど
先生の気持ちが
まったく見えない
それが私を不安にさせた



