先生の隣は居心地が良すぎる


だから だんだん
家に近づくにつれ
息が苦しくなる



現実に引き戻される



門の前に車を止め


「着きましたよ
お嬢さん」


先生は私の家を見つめ


「いつ見てもスゲーな」


独り言のように呟いた



私の頭の中には


もし良かったら
晩御飯 一緒しませんか?とか



もう少しドライブしたいとか



何かうまい誘い文句がないか


言葉が洪水みたいに溢れてた



帰りたくない
一緒にいたい
ひとりぼっちは嫌だ


言いたい事
言えない事



ごちゃ混ぜになって
結局
何一つ 口にする事が出来ない




変な沈黙で
車内が包まれたから


ひざの上
ギュッと手を握りしめ


お礼を言って車を降りようと
口を開きかけた時



「イチ、まだ時間 大丈夫なの?」



「…………へ?」


先生が急に口を開いて



「大丈夫ならさ
うちに来て
メシ作ってくんない?」


呆然とする私に
ニッと笑い



「湖、連れて行って
やったんだから
メシ、作ってよ」



「……………」


想定外の先生のお願いに
嬉しすぎて 胸がいっぱいになる



「し、仕方ないなぁ」


気持ちがバレないように
ぶっきらぼうに言った
言葉とはウラハラ
顔は どうしても笑ってしまう



「よし!
んじゃ、スーパー行くぞ」


先生はまた車を発進させた