帰りの車の中
「うわー!手、焼けてる」
すっかり日焼けした手を
眺めてると
先生はクスクス笑いながら
「イチは白くて細いから
日焼けでもした方がいいよ」
「えー、イヤだよ
あ~あ、もっと日焼け止め
塗れば良かった」
ため息ついて
日焼けした手から
隣に視線を移す
金色の夕陽が
運転席の先生を照らして
日に透けて
いつもより
茶色く見える髪とか
ハンドルを握る手とか
横顔を見つめると
胸の中に何か
自分でも わからない
何か塊みたいなのを感じる
先生を見つめると
胸の中で謎の塊が
膨らんだり
落ち着きなく騒ぐ
「……ごめんね、先生」
「なにが?」
「だって週末はN市に
帰るんでしょう?
今日、邪魔しちゃった」
先生は柔らかく
表情を崩して笑い
「イチ。
いつも言ってるけど
お前を邪魔になんか思わない」
ああ……、これだ。
こういう時の表情
優しい声が
私を無防備な子供に
戻してくれる



