湖のほとり
イーゼルを立てると
先生は木陰に
ビニールシートを敷いて
ゴロンと寝転がった
「先生は描かないの?」
私の声に手を上げ横に振る
……先生は
『記憶の中の海』しか
描かないもんね
「ねぇ、せっかく
一緒に来たんだから
指導してよー!」
スケッチに来て
放置されたら
寂しいでしょう
先生はダルそうに
上半身を起こし
「基本を大事にしろ。
まずは主題を決めて
全体の比率を考える。
見たまま写すなよー
絵は作る物だからな」
本当に基本的な事だけ言って
またゴロンと
足を組み寝てしまった
なんだよ、つまんないな
空は雲一つなくて
湖面はキラキラキラキラ輝く
遠くで鳥の鳴き声がして
蝉もシャワシャワ鳴いてる
後ろの木陰で休む先生は
何を考えているのかな?
あの海には行けない
海でなんか嫌な事が
あったのかな
それでも海しか描かないのは
どうしてだろう?
今日は週末
本当なら
フミに会いたい日だよね……
先生は私の事を理解してくれる
苦しい時は助けてくれる
だけど
私は先生の事 何一つ知らない



