おばあさんが
部屋から出てくる
気配がして
慌てて
立ち去ろうとしたけど
一歩 遅かった
ガチャン……
書斎から出て来た
おばあさんは
私を見るなり
ギュッと眉を寄せ
汚い物を見るような目をした
軽く頭を下げて
背を向け歩き出した私に
「ちょっと、あなた!」
厳しい声で呼び止められ
仕方なく振り返ったけど
陰気なあの視線
おばあさんの言葉を思いだし
うつむいて 目を逸らす
「あなたも一応
一ノ瀬の姓を
名乗ってるのだから
外泊など
勝手な事を
しないでちょうだい」
……二晩いなかった事
知ってるのか………
「どこで何をするか
わからないもの
一ノ瀬の恥になる事だけは
しないでくださいね」
言いたい事を言って
おばあさんは踵を返し
自分の部屋へ戻って行った
「…………恥?」
……私が何したっていうのよ
玄関で靴を履く私に
お手伝いさんが声をかける
「お嬢様、朝食は
召し上がらないのですか?」
私は曖昧にうなずいて
家を出た
血の繋がった家族が
私は この世で
一番 信用出来ない



