帰っちゃった…。

最後までいてもらう予定だったのに…。



ガッカリしていると、優人が入り口のドアを開けて片手に持っていたものを外にぶら下げた。

ん?あれ…何……?


不思議そうな顔をしているアタシを優人が見た。

…目…合っちゃった…

「あ、今のやつ?一応他の生徒が来ないように『使用中』って札掛けたんだけど…。

それよりさ…」

…きたっ!…どうしよ…

「黙っててごめん。香織が高校生だって聞いて言い出せなかった…。

高校の先生だって言ったら終わっちゃうんじゃないかって思ったら言えなかった。

ごめん!!」

椅子に座りながらもアタシに頭を下げる優人。


「ちょっ…優人…頭なんか下げないで…。アタシだって優人に聞かなかったんだもん。

始業式で見つけた時はビックリしたけど…優人だけじゃない。どっちが悪いとか…やめよう?

それに……」

そこまで言いかけて、アタシは言葉を詰まらせた。

…別れたくないよ…。

言いたいのに声が出てこない。