「よいしょっつっと…。」

優人がバケツを下ろした。


たった一言で二人は反応する。

もちろんアタシもこっそり…。



「先生オジサンじゃんっ!!」

「はいはい。ほらっ…俺は泊まりじゃないからさっさとはじめるぞ?」

『ほら』って…

そのセリフ何度聞いてもドキドキするよ…。

二人で来た時にもそう言って上着くれたよね…。



「……ね…山根、花火…。」

ボーッとしていたアタシは優人の呼びかけで現実に戻った。

『山根』って呼ばれちゃった…。

…苗字が嫌いなんじゃない。

『香織』って呼んで欲しいだけ……。



「あ…はい…。」

ガッカリしながらも、慌てて手に持っていた袋を差し出した。