「はぁ!? 天音ちゃんが、
連れてかれたぁ~!?」




でかい声を出す郁也。



「ちょっと! 声が大きいよ!
誰かに知られたらヤバイんだって!!」



石倉に腹をグーで殴られて、
一瞬で大人しくなる。




さっき、俺の名前を呼びながら
石倉は教室に帰ってきた。



昼休みのくせにどこ行ってたとか、
結構どーでもよかったけど。



この話を聞いて、
俺は一気に冷静いっつーモンがなくなった。




「どうにかしてよ! 谷澤くん!!」


「え。俺っ?」


「ったり前でしょ!?
誰の所為で連れてかれたと思ってんの?」





いきなり話を振られたかと思ったら、
いきなり俺の所為になってる。



なんなんだ?



「天音はね!!
アンタのファンに連れてかれたんだから!」



俺の服に掴みかかり、
声を震わせた石倉。



その目には、
少しだけ涙が溜まってる。