「俺が間違っていた。
娘だからと自制してきたが、これほどの分からず屋には殴ってでも思い知らせる必要がある。」
またお父さんが手を上げた。
体が強ばる。
しかしそれを止めたのがお母さんだった。
「あなた止めて!
八智絵を叩かないで!」
お父さんの手を掴み、必死に下ろそうとするお母さん。
しかしお父さんは、そんなお母さんに退くよう怒鳴り始めた。
私はその二人のやり取りをただ見上げ、
次に、お母さんの泣き出しそうな顔を見上げ、
次に…お父さんの振り上げられた手の平を見て…、
「……私、今日ご飯いらない…。」
また同じ言葉を呟いた。
「どけ智尋!
八智絵に分からせるんだ!」
「あなた!いけません!
落ち着いてっ!」
二人に、私の声は届いていなかったけど。
憤りを心に秘めたまま立ち上がると、私は部屋に戻るため踵を返した。
後ろからお父さんに声をかけられたけど…無視を決めこんで。



