咄嗟に逃げようと後ろに下がる…が、お父さんのほうが少し速かった。
私の腕を掴み上げ、更に冷たく言う。
「そんなに父さんが嫌か。
どうせまだこの間のことに腹を立てているんだろうが、いい加減大人になりなさい。
いつまでもあんな男に懐いていないで、少しは自分で人間を見極めようとしなさい。」
「……は…?」
待ってよ、何それ。
「叔父さんが…駄目な人間だって言いたいの?」
あんな男とか…。
見極めろとか…。
叔父さんの何を見たらそんな発言が出来る…?
まともにあの人のことを見ていないくせに。
お父さんはひとつ呼吸する。
「そうだ。あいつは最低の人間だ。
八智絵は奴を知らなすぎる。」
「……今…っ、」
何て言った?
頭ではそう訊くつもりでいた。
でも体は正直で、掴まれていた手を振りほどくと、私の両手はそのままお父さんの襟元に伸び、胸ぐらを思い切り掴んだ。



