走っていく先輩の遥か先に誰かが立っていた。
これも毎回同じ人。
遠目で顔の判別がつかず、恋人や愛人という噂が飛び交っているけど、実は私はあの人の正体を知っている。
先輩を迎える、姿勢良い金髪の不良っぽい風貌。
それは私のいとこであり、先輩のいとこでもある智之に間違いはなかった。
「あらら。」
迷惑してると言っておきながら先輩ったら、申し訳なさそうにしちゃって。
いつも威厳ある先輩がそんな低姿勢だと妙な気分になる。
下手(したて)に出ている華実をにこやかに迎える智之は“アホっぽい”という言葉がピッタリだった。
「じゃあ、八智絵ー!
また、学校で!」
さっき会ったばかりなのに忙しい人だな。
手を振る先輩に、私も手を振り返す。
私に気付いたらしい智之もヒラヒラと手を振ってはくるけど、敢えて無視。
叔父さん以外の男とは馴れ合いたくないもの。



