「華実先輩!それいい!最高!
早速今夜にでも、叔父さんに電話してみますっ!」
半分夢心地で、私は拳を握り締めながら語勢を強めた。
先輩は嬉しそうにまた微笑み、そしてふと何かを思い出したような顔をしてから、申し訳なさそうに私を見る。
「ごめん八智絵。
私、ちょっと用事を思い出してしまって…今から行かなきゃいけないんだ。
悪いけど、学校には先に行ってくれるかい?」
もうすぐホームルームが始まる時間なのにどういうつもりなんだろう…という疑問は抱かなかった。
実のところ、先輩が“用事”とやらで突然いなくなるのは以前からあったこと。
そんなしょっちゅう何の用事があるのか訊いても教えてくれないけど、他の人の生き方に口出しをするのは野暮だ。
「はーい。気をつけてくださいね。」



