そんなあまのじゃくな自分に苦笑しつつ、私は改札の奥を目を凝らして見た。
到着した電車から、雪崩のように押し寄せてくる人、人、人。
その中に一人、大好きな叔父さんを見つける。
私にとっては、呼吸するくらい簡単なこと。
「あっ……!」
人波に、見慣れた髪がチラッと見えた。
少々癖のついた黒髪。
昔、猫みたいだと私が褒めた髪だ。
白いシャツに映える黒のユニセックスなネクタイ。
叔父さんはなかなか可愛い趣味の持ち主だ。
「間違いない…。」
ひとつ呟くと、私は躊躇いなく手を大きく振り始めた。
さっきのカップルが変な目をする。
他人なんか関係ない。
私が今気にするべきは叔父さんだけ。
手に気付いて、改札向こうの叔父さんも軽く手を振り返してくれた。



