部屋に飛び込んで適当な鞄を掴むと、ケータイと財布を突っ込む。
残金なんか確認してないけど、K原駅の往復ならお金は足りる筈。
飾りっ気の無いシンプルな部屋着のまま、私は鞄を肩にかけて部屋を出る。
その際、
「…………。」
トモミくんが目についた。
ベッドの上にちょこんと座るライアート商品。
「ごめんね。君は連れて行けないの。」
理由はひとつだけ。
私は“智充叔父さん”を感じたい。
だからトモミくんの出る幕はない。
…むしろ、トモミくんを見れば見るほど思う。
手の届かない叔父さんの代わりにあてがわれた“代用品”みたいだ、と。
“代わり”なんか要らない。
私が欲しいのは叔父さんだけ。
身も心も、命すら、叔父さんの全てが欲しいと思うようになったのは今日や昨日の話じゃない。



