姪は叔父さんに恋してる




《もしもし、八智絵か?
久しぶり。》



開始3秒。
私はフリーズした。

低くて澄んだ声。
気品すら感じる物言い。
それらは私に“考える”という行為を許さない。

しばし、通話相手がいるのに無言になって、その愛しい声に私は一人酔っていた。


《……ん?八智絵?あれ…。
…どうした?大丈夫か?》


「あっ、ご、ごめんっ!」


酔っていると、私の意識は瞬時に呼び戻された。

私を心配してくれる叔父さんの声もまた耳に心地よくて、フリーズしかけた意識をなんとか精神力で保つと、平静を装いつつ会話を続行する。


「お、叔父さん、久しぶりっ。
今、改札の前にいるよ。
あとどのくらいで着くっ?」

《もう着いてたのか、早いな。
今電車が着いたところだから、すぐに合流出来る。
待たせて、悪かったね。》