ケータイが鳴ったのは、その直後。
「!?」
ポケットに入れておいたケータイの着信アラームが鳴り響く。
雑踏にかき消されてほとんど聴こえないけど、私は素早くケータイを取り出し、そして握り締めた。
そのアラーム音は、普通の着信音じゃない。
他の着信と間違えないよう、私が意図的に変えたもの。
この音が鳴るのは、二ヶ月ぶりくらい。
ディスプレイには、私の大好きな名前が表示されていた。
【智充叔父さん】
握り締める手に力が入る。
心を落ち着かせて、呼吸を整えて、私は通話ボタンに指を置いた。
「……ふうっ…。」
雑踏の中でも、小さい電子音は確かに耳に届いた。
「もっ、もしもひ…ッ!」
…噛んだ。馬鹿。私の馬鹿。



