記す者


 ──私は初めて、自分の心の中にだけそれを記した。

 人には、知らなくてもよいことがある。知るべきでないモノがある。

 ノインの悲しい顔は見たくない、狭い部屋に閉じこめられているベリルを想像したくない。

 より多くの命を救える人たちの自由を、私が奪っていいはずはない。

 ただ知った事実をあげつらうことが、私の仕事では無いはず──何を公表すべきか、私に何が出来るのか。

 本当にやらなければならないと感じたものを、私は発し続けていきたい。

 彼らが強く見えたのは、自分のしていることに誇りを持っているからなのだ。

「適材適所ね」

 つぶやいて笑った。

 そして、再びノートパソコンを開く。